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非上場株式 会計検査院の指摘と株価対策への影響

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2024年11月6日、会計検査院から相続・贈与に関する非上場株式の評価方法について、「公平性が確保されていない」との指摘が公表された。この報告により、非上場株式の評価基準や将来の税制改正への影響について、改めて注目が集まっている。本記事では、今回の指摘内容と、今後の株価対策への影響について解説する。

 

非上場株式の評価方法の概要

 

国税庁は、会社の規模が、上場会社に匹敵するものから、個人企業と変わらないものまで様々あるため、同一の方法により評価することは適当でないとし、会社の規模区分に応じ、異なる評価方法を定めている。

会社は総資産価額、従業員数、取引金額に基づいて「大会社」「中会社」「小会社」に分類され、それぞれ以下の評価基準が適用される。

大会社:上場会社と同等の規模を持つ企業で、類似業種比準価額を主に用いる

中会社:類似業種比準価額と純資産価額を併用する

小会社:純資産価額を主に用いる

 

類似業種比準価額は、評価会社と事業内容が類似する業種目に属する上場会社群の株価を基に、類似業種の配当・利益・純資産の3要素に対する、評価会社の配当・利益・純資産の3要素の割合を加味して算定する。

会社の業績等を表す3要素について、類似業種と評価会社とを比べて、相対的に株式を評価するものだ。

 

会計検査院の指摘とその背景

 

検査院は、令和2年、令和3年の相続税・贈与税の申告のうち、1,600件を無作為に抽出して、検査を行った。

その報告によると、類似業種比準価額11,622円(中央値)、純資産価額42,648円(中央値)となる。

類似業種比準価額は、純資産価額の27.2%の評価額となり、相当低い水準である。

 

「大会社」は、類似業種比準価額そのものが評価額となる。

一方、「小会社」は、類似業種比準価額を50%、残りの50%は純資産価額を加味して、その評価額とする。

評価会社の規模区分が大きいほど、類似業種比準価額の影響度が高くなるため、相対的に評価額は低く算定される。

報告書の中では、「会社の規模区分を変えるための操作」、「特定の評価会社の要件に該当しないようにするための操作」などを行い、税負担の軽減を図る納税義務者の存在が示されている。

 

また、類似業種比準価額が低くなる要因として、その評価に係る配当・利益・純資産の3要素のうち、配当に関する記述がある。

検査対象の非上場会社の約80%は、そもそも配当をしていないなど、上場会社である類似業種と、非上場会社である評価会社の、配当の動向が大きく異なるため、評価方法として適切に機能していない旨の指摘も示された。

 

以上より、会社の規模区分による不公平さ、類似業種比準価額における配当要素の取扱いに関して、今後税制が改正される可能性がある。

 

今後の株価対策への影響

 

会計検査院の指摘を受け、「会社の規模区分を意図的に変更する」ことで評価額を低く抑える対策が、今後の税制改正により効果を失う可能性がある。たとえば、グループ会社の吸収合併や一部事業の吸収分割などによる規模拡大の操作が、株価評価に与える影響が小さくなることが想定される。

 

また、既に株価対策を行っている会社においては、株式の評価額が増加するリスクに備えて、納税資金の確保や遺言書の見直しを検討する必要がある。さらに、精算課税制度を活用した株式贈与や個人間での株式譲渡を早めることが、今後のリスク軽減になろう。

 

「特定の評価会社の要件に該当しないようにするための操作」に関しては、いわゆる株特外しがあるが、借入による不動産購入、グループ会社から不動産等を吸収分割より移転させる、などの株価対策への影響にも注視していくことが必要となろう。

 

まとめ

 

会計検査院の報告により、非上場株式の評価方法に関する不公平性が明らかになり、将来の税制改正による影響が懸念されている。特に会社の規模操作による株価対策が効果を失うリスクに注意し、今後の状況に応じた柔軟な対策が必要だ。適切な株価対策を継続しつつ、今後の動向を注視することが重要である。

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