令和6年から施行される新たな個別通達により、相続や贈与における区分所有のマンション評価額が大幅に上昇することが決定した。この変更により、タワーマンションを中心に広がっていた「タワマン節税」の手法が見直され、市場価格と相続税評価額とのかい離が是正される。
新しい評価方法の概要
国税庁が発表した新しい評価方法では、相続税評価額と市場価格のかいり率を縮小することが求められており、都市部のタワーマンションから地方の分譲マンションにも影響を与える。例えば、平成30年のデータによると、区分所有マンションの市場価格と相続税評価額のかい離率は平均2.34倍に達していたが、新しい評価方法ではこのかい離率を最大でも1.66倍に抑えることが求められている。言い換えると、相続税評価額は、少なくとも市場価格の60%以上とすることが必要となった。
市場価格と相続税評価額のかい離率
市場価格と相続税評価額とのかい離率が高い場合、相続税評価額が実際の市場価格に比べて極端に低く評価されてしまう。しかし、新しい評価方法では、相続税評価額が市場価格の60%以上に引き上げられることが求められ、具体的には、次のような基準が設けられる。
- 相続税評価額が市場価格の60%以下の場合、評価額の引き上げが必要。
- 相続税評価額が市場価格の60%~100%であれば、追加の引き上げは不要。
- 相続税評価額が市場価格の100%を超える場合、評価額の引き下げが可能。
マンション評価の実際例
実際に市場価格と相続税評価額にかい離がある場合、その差を補正する必要がある。以下に一つの具体例を示す。
例: 市場価格2億円、相続税評価額1億円の場合
市場価格2億円 × 60% = 相続税評価額1.2億円 と補正による引き上げが必要
※実際の補正式: 相続税評価額1億円 × かい離率2.0×60% =1.2億円
このような補正により、相続税評価額を適正な市場価格に近づけることが求められる。
かい離率の算定方法
相続税評価額の補正には、かい離率を求めるための算式が用いられる。この算式では、評価対象となるマンションの「築年数」「総階数」「所在階」「床面積」や「敷地利用権面積」などが入力項目となる。これらのデータを元に、かい離率を計算し、相続税評価額に乗じて理論的な市場価格を求めることができる。
対象となるマンションの条件
新たな評価方法の適用対象となるマンションは、居住の用に供することが可能な区分所有マンションであり、事業用として使用されている場合でも、台所や浴室がある場合には対象となる。一方、次のような条件に該当するマンションは評価補正の対象外となる。
- 総階数が2階以下のマンション(地下を除く)
- 居住用区分所有部分が3室以下で、かつ、そのすべてが親族の居住用である場合
- 棚卸資産として扱われるマンション
- 区分所有マンションの底地
相続税評価額の上昇と節税効果
新しい評価方法によってマンション評価額が上昇するが、それでも相続税評価額は市場価格の最大40%は減額することが可能である。また、貸家としての減額や、小規模宅地等の特例を利用した節税効果も引き続き活用できるため、相続税の負担軽減を図ることができる。
まとめ
令和6年からの相続・贈与におけるマンション評価額の見直しにより、相続税評価額と市場価格のかい離が縮小される。新しい評価方法では、相続税評価額の引き上げや調整が必要となるが、それでも依然として節税効果を享受するための方法は存在する。相続・贈与に関する計画を立てる際は、最新の評価方法を踏まえた適切な対策が求められる。