社長が自身の所有する土地を、生前に自身がオーナー経営する会社へ賃貸借契約にて貸し付ける場合、その土地の相続税評価を80%減額できる特例がある。この特例を活用することで、相続税の負担を大幅に軽減することが可能だ。しかし、減額特例を受けるためには賃貸額の設定が非常に重要であり、適切な額で契約を行わなければ特例を適用できないリスクがある。
賃貸額設定の重要性
賃貸額の設定にあたって、役員報酬が多額に支給されているため、所得税の負担を軽減しようと賃貸額を極端に低く抑えるケースが見られる。しかし、賃貸額が無償または固定資産税相当額程度の場合、賃貸借契約ではなく使用貸借契約とみなされてしまうため、相続税評価の80%減額特例を受けることができない。
特例を受けるためには、賃貸額を固定資産税の2〜3倍程度に設定することが望ましい。この設定により、適正な賃貸借契約とみなされ、相続税の評価減が適用が可能となる。
賃貸額の見直しと固定資産税評価額の変動
賃貸借契約を締結する際には、十分な賃貸額を設定していたとしても、その後の不動産価格や固定資産税評価額の変動に注意が必要だ。特に、近年の福岡市における不動産価格の上昇により、土地の固定資産税評価額が上昇している。固定資産税評価額は原則3年に一度見直されるため、令和6年度の新たな評価額に基づいて固定資産税が増額となるケースが多い。
賃貸額を長年見直していない場合、最新の固定資産税額を確認し、適正な賃貸額へ見直すことが必要となる。これにより、80%減額特例の適用可能な状況を維持することができる。
会社事業・建物の要件
会社が不動産貸付業を行っている場合、この80%減額特例の適用は受けられない。兼業している場合も、不動産貸付業に関わる土地については特例が適用されない。しかし、不動産貸付業以外の事業を行う会社が、社宅(社長の親族以外の社員も居住するもの)として貸し付けている土地であれば、特例が適用される。
また、この特例が適用されるためには、貸し付ける土地が建物または構築物の敷地であることが必要であり、その建物または構築物の所有者は、社長、社長と生計を一にする親族、または会社、のいずれかであることが求められる。
役員・株主の要件
この土地を相続または遺贈により取得する人は、相続税の申告期限において役員(法人税法に規定されるみなし役員を含む)であることが必要だ。また、相続開始前において、その会社が被相続人である社長およびその同族関係者の持株割合が50%超である同族会社であることも必要である。
まとめ
社長所有の土地を会社に貸し付ける場合、相続税評価を80%減額できる特例を活用することで、相続税の負担を軽減できる可能性がある。しかし、この特例を受けるためには、適正な賃貸額の設定や賃貸条件の見直しが重要である。固定資産税評価額の変動や不動産市況に応じて賃貸額を適切に設定し、必要な要件を満たすことで、効果的な相続税対策を実現しよう。